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最終更新日 2024.5.7

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消化器内科専門医が解説する下痢症〜下痢の定義、原因、症状と対処法〜

 

下痢って何?どんなものを下痢っていうの?

下痢とは一般に『通常よりも水分が多い便や、形のない便』、つまり水っぽい便のことを指します。柔らかいけど形のある便は『軟便』として、下痢とは区別されます。

・表1:軟便と下痢の違い

軟便下痢
柔らかいけど形のある便通常より水分が多い便、形のない便

下痢はその持続期間によって、2週間以内のものを『急性下痢症』、2週間~4週間続くものを『遷延性下痢症』、4週間以上続くものを『慢性下痢症』と分けられます。そのように分ける理由は、どのくらい下痢が続いているかによって考えられる原因、疾患が異なり、診断の助けとなるからです。

・表2:持続期間による下痢の定義

2週間以内2週間〜4週間4週間以上
急性下痢症遷延性下痢症慢性下痢症

みなさんご存じのように便の色は通常茶色です。これは胆汁という消化液の成分(ビリルビン)が大腸菌によって変化するためです。しかし体の状態によっては茶色以外の便となる場合があります。例えば腸の動きが落ちて便が長時間腸に留まっていたり、腸内細菌のバランスが変化して腸内が酸性になるなどすると消化液の成分が酸化して緑色便になることがあります。また、胃腸のどこかで出血を起こしていたりすると血の成分が消化液で変化して、黒色便になったりもします。肝臓の病気で胆汁が出なかったり、ある種の腸炎にかかったりすると白色の便となることもあります。このように、便の性状や色は体の重大なサインであることがあるので、普段から気にしてみるといいでしょう。

・表3:便の色と考えられること

茶色通常の便の色
腸内細菌のバランスが変化し、腸が酸性環境になっている可能性
血液が消化液で変化した色。腸のどこかで出血している可能性
肝臓の病気で胆汁がでなくなる。または腸炎などの可能性

下痢の原因は?

下痢の原因は様々です。急性下痢症はウイルスや細菌などによる感染症(いわゆる食あたり、感染性腸炎)や食べ過ぎによる消化不良が原因の大半を占めます。感染症ではノロウイルスが有名ですが、それ以外のウイルスでも感染力の強いものがあります。急性下痢症における頻回の下痢は脱水症を引き起こすきっかけになりますので、小さなお子さんや高齢者では特に注意が必要です。ほとんどは自然に治癒しますが、症状が強い場合、血便を伴う場合などは受診をおすすめします。


慢性下痢症の原因は、過敏性腸症候群、薬が原因となる薬剤性腸炎(抗生物質や抗がん剤、胃薬、血圧の薬などでも起こることがあります)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)などが多いです。その他では大腸がんも下痢の原因となることがあります。また、妊婦さんは下痢や便秘を起こすことが知られています。妊娠中、特に妊娠初期には女性ホルモンが多く分泌され、この女性ホルモンは腸の蠕動にも大きく関与するため、下痢や便秘の原因になります。

表4:下痢症の主な原因

急性下痢症慢性下痢症
・感染症(いわゆる食あたり、感染性腸炎)
・食べ過ぎによる消化不良
・過敏性腸症候群
・薬剤性腸炎(抗生物質や抗がん剤、胃薬、血圧の薬などでも起こることがあります)
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)
・大腸がん

下痢と合わさると危ない症状は?

感染性腸炎などでは腸の動きが悪くなることがあります。そうすると胃や腸の内容物が溜まったままとなり、吐き気や嘔吐を伴います。
下痢や嘔吐が繰り返し起こると体から多くの水分が失われ、脱水症の危険性が高くなります。脱水症になると体が重い、頭痛、足がつる、立ち眩みなどの症状が出たり、より重症では意識障害を起こすこともあります。
喉の渇きを自覚することが多いですが、小さなお子さんや高齢者では喉の渇きが少なかったり、訴えられないことがあるため飲水行動をとれず、どんどん脱水が進行することがあります。吐き気や嘔吐が強く飲水も難しい場合には医療機関を受診して下さい。
腹痛が強いときや発熱、便が黒い、血が混じる(血便)などの症状がみられた場合も専門医による診察が必要です。

どのくらい下痢が続いたら病院にいけばいいの?

病院にいく目安に決まりはありませんが、症状が強い場合や血便が出る場合などは医療機関の受診をおすすめします。
例えば1日に10回をこえるような下痢が毎日続く、強い腹痛がみられる、下痢とともに嘔吐が止まらないなど、強い症状があれば我慢せずに医療機関を受診しましょう。

検便って何を調べるの?意味あるの?

下痢の際に検便検査を行うことがあります。
ただ実際に便をとって何を調べるのかは、その想定している原因によって異なります。急性下痢症においてウイルス感染ではなく細菌感染を疑う場合、原因菌を突き止めるために便培養検査を行うことがあります。この培養検査によって、カンピロバクター、サルモネラ菌、ビブリオ、エルシニア、病原性大腸菌など細菌性下痢症を引き起こす原因菌の有無を調べることができます。
その他にも、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患でも検便を行うことがあります。
従来、血液検査以外でこれらの疾患の炎症の程度を測るには、大腸カメラ検査で腸の粘膜を実際に見て評価することが一般的でした。しかし頻回の検査は非常に大変で負担が大きいため、代替検査が望まれていました。
最近では内視鏡検査以外の方法として、検便検査(便中カルプロテクチン測定)を行い潰瘍性大腸炎やクローン病のフォローアップがされています。

下痢の対処法は?早く治す方法はあるの?

下痢の対処法、治療法は原因によって異なります。感染性の下痢で特にウイルス性の場合、基本的には根本的な治療薬はなく、自身の免疫力による治癒を待つより他ありません。そのため辛い症状を和らげる治療を行います。
しかしながら下痢止めはウイルスなどが腸から体の外に出るのを妨げてしまうので、かえって症状が長引くため原則使用しません。早く治す方法や薬は腸を休めること(消化のよいもの、ゼリー飲料など便になりにくいものを摂る)、脱水予防に水分を積極的に摂取することです。感染性の下痢への整腸剤の有効性ははっきりと証明されたわけではありませんが、抗生物質による下痢症や過敏性腸症候群には有効性が示されています。
また、腸の調子が悪いときは一時的に乳糖不耐症といって牛乳、ヨーグルトといった乳製品で下痢が起こりやすい状態になる人がいるため、避けた方がよいでしょう。

おわりに

アンカークリニック船堀南では、当日の診療にも対応しています。下痢には先述のように様々な原因があります。強い症状、つらい症状が続く場合、受診に迷う場合など、一度当院にお問い合わせ下さい。

記事監修者

アンカークリニック船堀南院長

野坂 崇仁 医師

東京都の三次救急病院やがん拠点病院で救急から慢性疾患、指定難病、がんに至るまで全ての消化器疾患の診断、治療からフォローアップまで診療に従事し2024年8月より現職。

<略歴>
2012年 東邦大学医学部卒
2012年 厚生中央病院 初期研修
2014年 都立墨東病院 消化器内科後期研修
2017年 がん研有明病院 出向
2018〜2023年 都立墨東病院 消化器内科
<資格など>
日本内科学会認定医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本肝臓学会肝臓専門医
日本消化器内視鏡学会関東支部評議員
難病指定医

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