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最終更新日 2024.5.7

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内視鏡専門医・指導医が解説する胃ポリープ

 

この記事を読むとわかること

アンカークリニックの消化器内科専門医、内視鏡指導医が胃ポリープについての疑問が解決できるように、解説しています。

胃ポリープとは?

健康診断の胃バリウム検査や胃カメラ検査で、胃にポリープを指摘された人もいるのではないでしょうか。胃ポリープとは胃の内側に出っ張った病変という意味で、より詳しくいうと、胃の粘膜上皮から出ている腫瘍ではない病変を胃ポリープと呼び、良性の病変に対して使われる用語です。健康診断や人間ドックの内視鏡検査のデータを集計した全国調査の報告では、胃ポリープの発見頻度は概ね10~20%と示されています。ですので決してめずらしいものではありません。



胃ポリープの種類と原因について〜良性?悪性?がんになる可能性がある?〜



胃ポリープには胃底腺ポリープと、過形成性ポリープという2つの種類のポリープがあります。

胃底腺ポリープは、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していないキレイな胃にできるポリープで、胃のポリープの中では最も多く発生し、そして最も見つかる病変です。特に誘因なく発生している場合が多いのですが、中には特定の胃薬(プロトンポンプ阻害薬:ランソプラゾール、エソメプラゾールなど、カリウムイオン競合アシッド阻害薬:タケキャブ)を長い間服用していることが原因で発生する場合があります。その場合は原因である胃薬を中止するとポリープが消えることが知られています。また、稀ですが家族性大腸腺腫症という胃腸にポリープが異常に多発する病気(ポリポーシス)が原因となっている場合もあります。

過形成性ポリープは、一般にヘリコバクター・ピロリ菌に感染した胃にできるポリープです。原因であるピロリ菌の除菌治療を行うことでポリープが小さくなったり、消失することも多いですが、中には、除菌治療を行っても小さくならないものもあります。

過形成性ポリープは良性なのですが、一部は悪性に変化する、つまり、がん化することがあります。悪性化の頻度は0.6~2.1%とされています。良性と悪性の違いとしてポイントとなるのは、その大きさです。大きな過形成性ポリープがすべて悪性になっているというわけではありません。ただ、徐々に大きくなっていくものは一部が癌化している事があり注意が必要です。専門的ではありますが、胃カメラ検査において拡大内視鏡検査という詳細な観察を行うと、癌化している部分がわかることもあります。

なお、ポリープの原因について、食事内容や生活習慣、例えばコーヒー、辛いもの、お酒や喫煙などが胃ポリープに影響するのではないか、といった内容を目にすることがありますが、現時点で直接的な関係を証明した報告はありません。

胃ポリープに症状はある?

胃ポリープのみで症状が出ることはほとんどありません。多くの人がバリウム検査や胃カメラ検査で偶然みつかります。なお、身体を輪切りにしてみるCT検査ではかなり大きな病変でなければ写りませんし、お腹のレントゲン写真でも写ることはありません。胃ポリープの中でも過形成性ポリープは、血液がサラサラになるような薬を服用していたり、人工透析を受けている方では稀に出血することがあります。その場合には黒色便や、貧血の症状(ふらつきや軽労作での息切れなど)が出ることがあります。

胃ポリープは放っておいてもいいの?

胃底腺ポリープ、過形成性ポリープはともに良性ですので、それだけなら治療を行う必要はありません。

胃底腺ポリープは通常放置しても問題ありません。多発性の場合、家族性大腸腺腫症を疑う場合には大腸のチェックが必要ですので、大腸カメラ検査を受ける必要があります。家族性大腸腺腫症では胃底腺ポリープの他に胃腺腫という切除が必要な腫瘍が発生していることがあります。そのため定期的な胃カメラ検査も必要です。

過形成性ポリープはピロリ菌が関係していますので、まずピロリ菌の感染があるかどうかを確認し、感染があれば除菌治療を行います。過形成性ポリープではほとんどの場合、同時に慢性胃炎も指摘されます。ピロリ菌による慢性胃炎(萎縮性胃炎)は胃癌の発生母地です。ポリープの経過観察だけでなく、萎縮性胃炎がある人に胃癌ができていないかという意味においても定期的に胃カメラ検査を受ける必要があります。

また、先述のように過形成性ポリープは癌化する可能性があります。だんたん大きくなっているもの、出血しているものなどは胃カメラ治療で切除して、良性か悪性かを治療とともに診断する場合があります。 胃癌の9割はピロリ菌感染に関連して発生しますが、昨今『ピロリ陰性胃癌』という、ピロリ菌に感染していない胃にできる癌がみつかるようになってきました。

さて、ピロリ菌に感染していない胃にできるポリープは胃底腺ポリープでした。つまり、胃カメラ検査をしたところ、胃底腺ポリープと思いきや胃癌が見つかることがあるのです。



こちらはピロリ陰性胃癌の一つで、腺窩上皮型胃腫瘍という病変です。果物のラズベリーに似た様子から『ラズベリー型胃癌』との俗称でも呼ばれます。このほかにも胃底腺型胃癌というピロリ陰性胃癌もあります。

バリウム検査では胃底腺ポリープとこのようなピロリ陰性胃癌の区別はつけられません。バリウム検査で胃ポリープを指摘された場合、慢性胃炎やピロリ菌の指摘がなくても一度は胃カメラ検査を受けることをお勧めします。



まとめ

胃ポリープはその診断が重要です。治療の必要性、経過観察の方法や頻度が病変によって異なりますので、一度は胃カメラ検査を受けることをおすすめします。アンカークリニック船堀南では消化器内視鏡専門医、指導医が診療しています。内視鏡検査では、過形成性ポリープの癌化でも説明した拡大内視鏡検査を行う機能を備えた次世代型のスコープも使用しています、胃ポリープを健康診断で指摘されたことがある方、バリウム検査のみしか受けていない方の他、疑問があるという方でも一度ご相談下さい。



記事監修者

アンカークリニック船堀南院長

野坂 崇仁 医師

東京都の三次救急病院やがん拠点病院で救急から慢性疾患、指定難病、がんに至るまで全ての消化器疾患の診断、治療からフォローアップまで診療に従事し2024年8月より現職。

<略歴>
2012年 東邦大学医学部卒
2012年 厚生中央病院 初期研修
2014年 都立墨東病院 消化器内科後期研修
2017年 がん研有明病院 出向
2018〜2023年 都立墨東病院 消化器内科
<資格など>
日本内科学会認定医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本肝臓学会肝臓専門医
日本消化器内視鏡学会関東支部評議員
難病指定医

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