大腸がんが増えている理由
日本では近年、大腸がんが急速に増加しています。食生活の欧米化や高齢化の影響を受け、大腸がんはがんの中でも特に罹患数の多い病気のひとつとなっています。男女ともに罹患数は上位を占めており、現在では日本の女性におけるがん死亡原因の第1位です。 しかし大腸がんは、「予防できるがん」「早期に見つければ治せるがん」でもあります。 この記事では、その理由と対策について、江戸川区船堀にあるアンカークリニック江戸川の消化器内科医師が、消化器専門医、内視鏡専門医の立場からわかりやすく解説します。
大腸がんの原因と予防できる生活習慣
大腸がんは、生活習慣や食事内容と深く関係しています。
● 食生活
赤身肉や加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージなど)を多く摂る食習慣は、大腸がんのリスクを高めることが知られています。 一方で、野菜・海藻・豆類などに含まれる食物繊維は、腸内環境を整え、リスクを下げる効果があります。
● 運動と体重管理
運動不足や肥満も大腸がんの危険因子です。週に数回のウォーキングなど、無理のない運動を継続することが大切です。
● 喫煙・飲酒
喫煙や多量の飲酒も大腸がんのリスクを高めます。控えることで予防効果が期待できます。
● 遺伝的要因・腸疾患
Lynch症候群と呼ばれる遺伝性の大腸がんでは、生涯にわたって大腸がんを発症するリスクが高いことが知られています。ただし、ご家族に大腸がんの方がいるからといって、必ずしもご本人が大腸がんになるわけではありません。
また、潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸の持病がある方では、大腸がんのリスクが高くなることがあるため、定期的な検査が重要です。
初期に出にくい大腸がんの症状
早期の大腸がんは、ほとんど症状がありません。早期のがんでは腸の表面の粘膜にわずかな変化が生じるのみで、症状につながらないためです。がんが大きくなってくると、次のような症状が現れることがあります。以下の変化に気づいた場合は、早めに受診してください。
● 便に血が混じる(血便) ● 便が細くなった ● 排便しても残便感がある ● 下痢と便秘を繰り返す ● お腹の張りや痛み ● 原因不明の貧血・体重減少これらの症状は、痔や腸炎、便秘などでも起こるため、一般の方では判断が難しいと思います。「様子をみよう」と放置してしまうと、早期発見の機会を逃してしまうこともあります。気になる症状がある場合は、一度専門医の診察を受けることをおすすめします。
大腸がんを見つける検査方法
便潜血検査
健診などで広く行われている検査で、最初のスクリーニングとして有効です。検査の特性上、がん以外の原因や異常がなくても陽性になる場合(偽陽性)があります。陽性の場合は、大腸カメラ検査で腸に異常がないかを確かめる必要があります。 大腸カメラ検査(下部消化管内視鏡) 大腸がんを最も確実に発見できる検査です。がんの前段階であるポリープも診断でき、施設によっては発見次第その場で切除することも可能です。近年は鎮静剤を使うことで、ほぼ眠っている間に検査を受けることができ、多くの人は痛みや不快感をほとんど感じずに検査を終えられるようになってきました。CT・MRI検査
進行がんは見つかる場合がありますが、ごく早期のがんは検出されないことがほとんどです。一般的には、がんの広がりや転移の有無を確認する目的で行われます。大腸がんの治療法
内視鏡的治療(ポリペクトミー・EMR・ESD)
ごく早期の大腸がんであれば、内視鏡で病変を切除し、根治が可能です。スネアとよばれる金属製のリングを用いて切除するポリペクトミーやEMR(内視鏡的粘膜切除術)、リングに収まらない大きな病変や、早期がんでもやや進行していると予想される病変をナイフ(電気メスのようなもの)を用いて剥がし取るESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などがあります。ポリペクトミーやEMRは、病変によってはクリニックでも対応可能です。ESDは入院が必要なため、主に病院で行われます。外科手術
内視鏡治療では根治がむずかしい早期がんと、転移が進んでいない進行がんでは、腸の一部とリンパ節を切除する外科手術を行います。近年は腹腔鏡手術やロボット支援手術が普及し、身体への負担が少ない手術が主流となっています。入院期間も以前にくらべて短くなっています。化学療法・免疫療法
手術後の再発予防や全身に広く転移した場合は、抗がん薬治療(化学療法)が行われます。近年では、がんの遺伝子変異に応じた分子標的薬や、体に備わっている免疫機構を利用するがん免疫療法、免疫チェックポイント阻害薬も標準治療として行われるようになってきました。早期発見の重要性と予後
大腸がんの予後は、診断時の進行度によって大きく異なります。2016年に診断された大腸がん患者の全国5年純生存率は約67.8%で、日本全体で約6〜7割の患者が5年後まで生存しているという結果でした。一方で、ステージ毎の5年生存率は以下のように大きく差があります。| 進行度 | 5年生存率 |
|---|---|
| ステージⅠ(早期がん) | 約92% |
| ステージⅡ | 約86% |
| ステージⅢ | 約76% |
| ステージⅣ(遠隔転移) | 約18% |

