「アンカークリニック船堀院」「アンカークリニック船堀南院」は統合し、 現在は「アンカークリニック江戸川」として診療を行っています。
家族から「認知症かもしれない」と言われた。あるいは診察を受けて、その可能性を指摘された。そうしたとき、多くの方がまず知りたいのは、これから何が起こるのか、そして何ができるのか、という点ではないでしょうか。
先に整理しておきます。認知症は一つの病気の名前ではありません。さまざまな病気によって認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障が生じている状態を指す言葉です。その背景にある病気は複数あり、種類によって現れやすい症状も、進み方も、選べる治療も違います。そして、診断を受けたからといって、その時点で何もできなくなるわけでもありません。
この記事では、認知症の主な種類と症状の違い、進行の経過、診断の流れ、治療の選択肢、家族が使える相談先までを整理します。「そもそも物忘れが認知症によるものかどうか分からない」という段階の方は、加齢による物忘れとの違いをまとめた記事もあわせてご覧ください。
※本記事は一般的な解説であり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。
認知症とは何か
認知症は病名ではなく、状態を指す言葉です
認知症とは、いったん獲得された記憶や判断、言葉、段取りといった脳の働きが低下し、その結果として日常生活や社会生活に支障が出ている状態を指します。原因となる病気は一つではありません。脳の神経細胞が少しずつ失われていくもの、脳梗塞や脳出血が引き金になるもの、特定のたんぱく質が脳にたまるものなどが含まれます。
そのため「認知症です」と伝えられた段階では、原因の病気まで特定されていないこともあります。原因が何かによって、進み方も、優先すべき対応も変わってきます。診察や検査を重ねて背景を絞り込んでいくのは、そのためです。
厚生労働省の研究班が2022年から2023年にかけて複数の地域で行った調査をもとにした推計では、65歳以上の認知症の人は2022年時点で約443万人、軽度認知障害(MCI)は約559万人とされています。2040年には認知症が約584万人になると見込まれており、決して珍しい状態ではありません。
症状は「中核症状」と「周辺症状」に分けて考えます
認知症の症状は、2つに分けて眺めると整理しやすくなります。
中核症状は、脳の細胞が障害されることで直接生じる症状です。新しいことを覚えられない記憶障害、日付や場所、人との関係があいまいになる見当識障害、順序立てて物事を進められなくなる実行機能障害のほか、判断力が落ちる、言葉が出にくくなる、慣れた道具の使い方が分からなくなるといった症状も含まれます。
周辺症状(認知症の行動・心理症状, Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia, BPSD)は、中核症状を土台に、本人の性格や体調、周囲の環境、人との関わり方が影響して現れるものです。不安、抑うつ、意欲の低下、興奮、幻覚や妄想、睡眠の乱れ、目的のはっきりしない外出などがこれにあたります。
この2つを分けて考えることは、生活を整えていく上で実務的な意味があります。中核症状は病気そのものの進行と結びついていますが、周辺症状は環境や関わり方、体調の調整によって軽くなることがあるからです。ご本人や介護者であるご家族や周りの方々が困っているのがどちらなのかを整理すると、打つ手が見えやすくなります。
認知症の初期症状と受診を考える目安
初期に気づかれやすいのは、記憶に関する変化です。同じ質問や同じ話を短い間に繰り返す、約束や予定を忘れる、物を置いた場所が分からなくなる、といった形で現れます。
ただし記憶だけとは限りません。段取りを立てて家事や仕事を進めるのが難しくなる、金銭管理や服薬管理がうまくいかなくなる、慣れた道で迷う、今日の日付や今いる場所があいまいになる、意欲が落ちる、性格が変わったように感じられる。こうした変化のほうが先に目立つこともあります。
受診を考える目安として重視したいのは、生活に支障が出ているか、変化が続いているかの2点です。年齢そのものは目安になりません。以前より明らかに増えている、数か月単位でできないことが増えている、家族が以前との違いをはっきり感じている。そのいずれかに当てはまるなら、相談してよい段階です。
なお、物忘れがすべて認知症によるものとは限りません。加齢による物忘れとの違い、MCI(軽度認知障害)の考え方、より詳しい受診チェック項目については「物忘れが増えたときの考え方についてはこちら」で整理しています。
認知症の主な種類と、症状の違い
ここからは代表的な4つの種類を見ていきます。まず全体像を示し、そのあとで一つずつ説明します。
| 種類 | 脳で起きていること | 現れやすい症状 | 経過の傾向 |
|---|---|---|---|
| アルツハイマー型認知症 | アミロイドβなどの異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が失われて脳が萎縮する | 最近の出来事が抜け落ちる、同じ話や質問を繰り返す、日付や場所があいまいになる | 年単位でゆるやかに進む |
| 血管性認知症 | 脳梗塞や脳出血によって脳の一部が障害される | 障害された部位によって症状が異なる、意欲の低下、歩きにくさ、感情の起伏が大きくなる | 脳血管障害が起こるたびに段階的に進む |
| レビー小体型認知症 | レビー小体と呼ばれるたんぱく質の塊が脳に蓄積する | 実際にはないものが見える幻視、調子の波、動作の遅さやふるえ、睡眠中の寝言や異常な動き | 日や時間帯によって状態が変動しやすい |
| 前頭側頭型認知症 | 前頭葉や側頭葉が萎縮する | 性格や行動の変化、同じ行動の繰り返し、周囲への関心の低下、言葉の障害 | 比較的若い年代で発症することがある |
アルツハイマー型認知症
認知症の原因として最も多いとされる病気です。脳にアミロイドβやタウといったたんぱく質が異常に蓄積し、神経細胞が壊れて脳が萎縮していくと考えられています。初期には昔のことはよく覚えている一方で、最近のことを忘れてしまう点が特徴として挙げられています。
進行すると、時間や場所の感覚があいまいになり、状況に応じた判断が難しくなっていきます。ただし進み方には個人差があり、年単位でゆっくり変化するのが一般的です。
記憶の抜け落ち方に特徴があるのもこの病気で、体験の一部ではなく体験そのものが抜けるように感じられることがあります。「食事をしたこと自体を覚えていない」といった訴えが典型例です。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血によって脳神経細胞がダメージを負い、その部位の働きが損なわれることで起こります。高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な危険因子とされ、脳血管障害が起こるたびに段階的に進むのが特徴です。
障害を受けた場所によって症状が変わるため、記憶は比較的保たれているのに意欲だけが大きく落ちる、あるいは手足の麻痺や歩きにくさが目立つ、といった形をとることがあります。できることとできないことの差がはっきりしている場合も少なくありません。
背景に脳卒中があるため、再発を防ぐ治療が同時に大きな意味を持ちます。高血圧や糖尿病、脂質異常といった生活習慣病の管理が治療の柱になります。心房細動といった脳塞栓症を起こす不整脈をしっかりとコントロールすることも大切です。
レビー小体型認知症
レビー小体というたんぱく質の塊が脳に蓄積することで起こります。特徴として挙げられるのが幻視で、そこにいないはずの人や動物、虫などがはっきり見えると訴えられることがあります。本人にとっては実際に見えているため、頭ごなしに否定されると強い不信につながりやすい症状です。
もう一つの特徴は、調子の波です。しっかり受け答えできる時間帯と、ぼんやりして反応が鈍い時間帯が入れ替わることがあります。「日によって別人のようだ」という家族の印象は、この病気を疑うときの手がかりになる訴えです。
パーキンソン病に似た動作の遅さ、筋肉のこわばり、ふるえ、小刻みな歩行を伴うことも多く、転倒しやすくなる点にも注意が必要です。加えて、睡眠中に大きな寝言を言う、手足を激しく動かすといった変化が、認知機能の低下よりも前から現れていることがあります。薬に対して敏感に反応しやすい面もあるため、治療は慎重に進められます。
前頭側頭型認知症
脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで起こります。目立つのは記憶の低下よりも、性格や行動の変化です。周囲への関心が薄れる、その場にそぐわない言動が出る、身だしなみに無頓着になる、決まった時間に決まった行動を繰り返す、といった形で現れることがあります。
言葉の面から始まるタイプもあり、物の名前が出てこない、言葉の意味が分からなくなるといった症状が先行する場合も少なくありません。
65歳未満で発症する若年性認知症の原因としても知られており、働いている年代では仕事上のミスや対人トラブルとして表面化することがあります。本人に困っている自覚が乏しいことも多く、家族や職場が先に異変に気づくケースが少なくありません。
複数の原因が重なることもあります
ここまで4つに分けて説明しましたが、実際には一つの原因にきれいに収まらないことがあります。特に高齢の方では、アルツハイマー型の変化と脳血管障害が同時に存在するなど、複数の要因が重なっているケースが珍しくありません。
そのため、初期の段階で種類をはっきりと断定できないこともあります。経過を見ながら診断を見直し、治療を進めていく必要があります。
治療によって改善が期待できる原因が隠れていることもあります
認知機能の低下として現れていても、背景に別の原因が隠れていることがあります。頭を打ったあと数週間から数か月かけて脳の表面に血がたまる慢性硬膜下血腫、脳脊髄液の流れが滞る正常圧水頭症、脳腫瘍などは、その代表です。
このほか、甲状腺ホルモンの不足、ビタミンB12の欠乏、薬の影響、うつ状態、脱水なども、記憶力や集中力の低下として自覚されることがあります。
これらは治療や調整によって改善が期待できる原因です。認知症の診療で早い段階の評価がすすめられるのは、こうした要因を見落とさないためでもあります。
認知症はどのように進行するか
進み方は原因となる病気によって違います
進行の速さや順序は、原因によって異なります。アルツハイマー型では年単位でゆるやかに変化していくことが多い一方、血管性認知症では脳血管障害が起こるたびに階段状に悪化することがあります。レビー小体型では、日や時間帯による変動が目立ちます。
「あと何年でどうなるか」という問いに、一律の答えはありません。同じ診断名でも、年齢、持病、生活環境、周囲の支えによって経過は変わります。数字を当てはめて見通しを決めてしまうより、患者さんの日々の変化を見ながら、その都度必要な治療やサポートを調整することが大切です。そして、大切なのは前もって準備をしておくことなので、「まだまだ大丈夫」と思わずに、少しずつ環境調整や必要なサービスの手配などを検討していきましょう。
急に進んだように見えるときは、別の原因を考えます
数日から数週間という短い期間で急に様子が変わった場合、認知症そのものの進行とは限りません。
発熱や感染症、脱水、便秘、痛み、環境の変化、新しく始めた薬などをきっかけに、意識のはっきりしない状態が急に現れることがあります。これはせん妄と呼ばれ、原因への対応によって改善する可能性があります。
また、転倒して頭を打ったあとであれば慢性硬膜下血腫の可能性も考えます。「最近急に分からなくなった」という変化は、認知症の進行として片づけず、医療機関への相談をご検討ください。
なお、呼びかけへの反応が一時的になくなる、話の途中で意識が途切れるといった症状は、記憶が抜けたように見えても、てんかん発作が関係していることがあります。判断の難しい領域ですので、気になる場合は「てんかんの症状と受診の目安についてはこちら」もあわせてご覧ください。
認知症の診断はどのように行われるか
ひとつの検査で診断が決まるわけではありません。問診、診察、認知機能の評価、血液検査、画像検査を組み合わせ、全体を見て判断していきます。ここで紹介するのは一般的な流れで、実際に行う検査は医療機関や症状によって異なります。
問診と生活状況の確認
いつ頃から、どのような変化が始まったのか。ここが出発点になります。本人が気づいていない変化を家族が把握していることも多いため、可能であれば同席していただくと評価が進めやすくなります。
あわせて、買い物や料理、金銭管理、服薬管理といった生活動作の変化、既往歴、脳卒中の危険因子、飲酒や睡眠の状況、服用中の薬も確認します。お薬手帳は持参していただきたい資料のひとつです。
認知機能検査と神経学的診察
症状や経過に応じて、MMSE(ミニメンタルステート検査)や改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)などの簡易的な検査を行うことがあります。いずれも30点満点で、一般にMMSEは23点以下、HDS-Rは20点以下が認知症の疑いとされますが、これはあくまで目安です。体調や心理状態、教育年数の影響を受けるため、点数だけで診断名が決まることはありません。
神経学的診察では、手足の力や感覚、歩き方、反射、話し方などを確認します。歩行の異常や麻痺は、脳血管障害や正常圧水頭症、パーキンソン病など、認知機能低下に関連する病気を考える手がかりになります。
血液検査
甲状腺機能、ビタミンB12、貧血、電解質、肝機能や腎機能、血糖などを調べることがあります。治療によって改善が期待できる原因を拾い上げる目的があり、認知症の診断そのものを確定させる検査ではありません。
画像検査(MRI・CT)で何を調べるか
MRIやCTでは、脳の萎縮の程度と分布、脳梗塞や脳出血の跡、慢性硬膜下血腫、水頭症、腫瘍といった変化を確認します。つまり「認知症かどうか」を判定する検査というより、原因を絞り込み、治療可能な病気を見落とさないための検査です。
注意しておきたいのは、画像に明らかな変化がないことが認知症の否定にはならない点です。アルツハイマー病では、初期に画像上の異常がはっきりしないことがあります。逆に、画像で萎縮が見られてもそれだけで診断が決まるわけではなく、症状や生活状況とあわせて判断されます。
MRI検査そのものについては「MRI検査について詳しくはこちら」で詳しく説明しています。
アミロイドPET・脳脊髄液検査という選択肢
アルツハイマー病に関連するアミロイド病理の有無を確認する検査として、アミロイドPETと脳脊髄液検査があります。
アミロイドPETは、放射性の薬剤を用いて脳内のアミロイド斑の集積を画像として評価する検査です。脳脊髄液検査は、腰から採取した髄液に含まれるアミロイドβやタウなどの値を測定し、アルツハイマー病に特徴的なパターンがあるかどうかを調べます。調べ方も得られる情報も異なりますが、いずれもアミロイド病理の有無を判断する材料になります。
これらは後述する抗アミロイドβ抗体薬の適応を判断する際に必要となる検査で、実施できる医療機関は限られます。すべての方に必要な検査ではなく、症状の経過や年齢、日常生活の支障度(Clinical Dementia Rating CDR)、抗アミロイドβ抗体薬治療の希望や適応を踏まえたうえで必要性が検討されます。
認知症の治療と、できること
従来から使われてきた薬(対症療法)
アルツハイマー型認知症では、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンといったコリンエステラーゼ阻害薬と、NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンが用いられてきました。これらは脳内の神経伝達物質の働きに作用し、認知機能や症状の改善・維持を図る対症療法の薬です。病気そのものを治す薬ではなく、原因となっている脳の変化に直接働きかけるものでもありません。
副作用として、コリンエステラーゼ阻害薬では吐き気や下痢などの消化器症状、頭痛、徐脈などが知られています。開始時や増量時に出やすいため、体調の変化がある場合には遠慮なく主治医に相談しましょう。
レビー小体型認知症では薬への反応が過敏になりやすく、前頭側頭型認知症では中核症状そのものに対する確立した薬物療法がないなど、種類によって考え方が変わります。原因を見極めてそれぞれの患者様に合う治療を検討する必要があります。
抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ・ドナネマブ)
これに対し、脳にたまったアミロイドβそのものを標的とし、病気の進行を抑えることを目指す薬が実用化されています。アルツハイマー病の原因と考えられている脳の変化に働きかける点が、前項の対症療法との違いです。
レカネマブ(販売名レケンビ)は2023年9月に承認され、同年12月に発売。ドナネマブ(販売名ケサンラ)は2024年9月に承認され、同年11月に発売されています。いずれも効能・効果は、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制です。進行を抑えることを目指す薬であり、低下した機能を回復させたり、進行を完全に止めたりするものではありません。(経験的には頭の曇りがかったような感覚が晴れたと実感するケース、認知機能の改善が認められたケースもあります。※使用された全員がそのようになるわけではありません。)
ただし、誰でも使える薬ではありません。対象はアルツハイマー病による軽度認知障害、または軽度の認知症の段階に限られます。加えて、脳にアミロイドβが蓄積していることをアミロイドPETまたは脳脊髄液検査で確認する必要があり、MRIによる評価も求められます。
さらに厚生労働省の最適使用推進ガイドラインにより、投与を行う医療機関には、医師の配置、検査体制、副作用が起きた際に対応できるチーム体制などの要件が定められています。治療を希望する場合は、まず診察と検査で対象に当たるかどうかを確認し、必要に応じて対応できる医療機関へつなぐ流れになります。
薬を使わない関わり方
薬物療法と並んで、生活の組み立て方やケアの工夫などの生活環境調整がとても重要となります。
生活のリズムを一定に保つ、見当識を助ける情報をあらかじめ生活環境に置いておく、本人が続けられてきた仕事や役割・習慣をできる範囲で残す、会話や活動の機会を確保する。こうした対応をすることで混乱や不安が減り、周辺症状の予防改善にもつながります。
注意したいのは、できないことを訓練で取り戻そうとするあまり、本人が失敗を重ねる場面をつくってしまうことです。目的は成績を上げることではなく、日々を穏やかに過ごせるようにすることにあります。
周辺症状への対応
不安、興奮、幻覚、睡眠の乱れといった症状に対しては、まず背景を探すところから始めます。痛み、便秘、脱水、発熱、薬の影響、環境の変化、聞こえにくさなど、原因になりうる要素は少なくありません。よくあるのは加齢による聴力低下・難聴により周囲の人の会話が理解できないために、会話から取り残されてしまうケースです。そのような場合には補聴器の使用をご検討ください。
幻視を訴える場合、事実として否定しても本人の不安は解消されません。見えている体験そのものは受け止めていただき、共感していただくことで不安感や興奮が落ち着くこともあると思います。また、部屋の照明や配置を調整してみてください。
薬物療法が検討されることもありますが、高齢の方では転倒や日常生活動作の低下、誤嚥性肺炎などの有害事象にも配慮が必要です。まず環境とケアの調整を行い、それでも本人や家族の負担が大きい場合に薬を検討する、という順序が基本になります。
進行に関わる要因と、生活のなかでできること
生活習慣を整えれば認知症を確実に防げる、という性質のものではありませんが発症や進行のリスクに関わるとされる要因はあるため、生活習慣の是正に取り組むことはとても大切です。
● 生活習慣病の管理
高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動の管理は、血管性認知症の背景となる脳卒中を防ぐことにつながります。
● 適度な運動
体調に合わせ、無理のない範囲で続けることが基本です。持病がある方は、かかりつけ医に相談してから始めてください。
● 禁煙と、過度な飲酒を避けること
喫煙率の低下は、国内の認知症有病率が以前の推計より下がった要因のひとつとして挙げられています。
● 睡眠の確保
いびきや日中の強い眠気があるときは、睡眠時無呼吸の可能性も含めて相談してください。
● 聞こえにくさへの対応と、人とのつながり
難聴は認知機能と関連が指摘されており、補聴器の使用で会話の機会を保つことが大切です。
家族が知っておきたい相談先と制度
地域包括支援センター
各市区町村に設置されている、高齢者の暮らし全般に関する相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが配置されており、医療機関の受診をどう切り出すか、介護保険の申請をどう進めるか、利用できるサービスに何があるかといった相談に応じています。 診断がついていない段階でも相談できます。本人が受診を強く拒む場合の相談先としても機能するため、家族だけで抱え込む前に一度連絡してみてください。
介護保険とサービス
介護保険は原則として65歳以上の方が対象ですが、40歳から64歳の方でも、若年性認知症を含む特定の疾病が原因であれば申請できます。申請先は市区町村の窓口です。
認定を受けると、デイサービス、訪問介護、福祉用具の貸与、ショートステイなどを利用できます。これらは介護をする家族の負担を減らすためだけのものではなく、本人がプロの支援を受け、社会とつながる機会でもあります。必要になってから慌てるより、早めに情報を集めておくと安心です。
認知症基本法と「新しい認知症観」
2024年1月、共生社会の実現を推進するための認知症基本法が施行されました。これに基づく認知症施策推進基本計画では、認知症になったら何もできなくなるのではなく、認知症になってからも、一人ひとりにできることややりたいことがあり、住み慣れた地域で希望を持って自分らしく暮らし続けられるという考え方が「新しい認知症観」として示されています。
診断を受けた直後は、できなくなることばかりに目が向きがちです。しかし実際には、支援や環境の調整によって続けられることは数多くあります。できることを続けていくことがご本人にとってもご家族にとっても、これからの生活を続けていく上でとても大切なこととなります。
運転免許について
運転については、多くのご家族が悩む問題です。75歳以上の方は運転免許の更新時に認知機能検査を受けることになっており、認知症のおそれがあると判定された場合には、専門医の診断または主治医の診断書の提出が求められます。その結果として認知症と診断された場合、道路交通法に基づき、運転免許は取り消しまたは停止となります。
判断に迷う段階であれば、各都道府県警察の安全運転相談窓口へ相談してみてください。頭ごなしに免許を取り上げるのではなく、生活の足をどう確保するのかということもあわせて考えていくことが大切です。
【江戸川区・船堀】アンカークリニック江戸川の脳神経外科・物忘れ外来
認知症や物忘れが気になる方は、当院の脳神経外科、物忘れ外来にご相談いただけます。当院の脳神経外科では、頭痛専門外来、てんかん専門外来、物忘れ外来を設けており、ご本人からのご相談にも、ご家族が変化に気づいた段階でのご相談にも対応しています。
脳神経外科専門医が診療を担当します
当院では、松本隆洋医師が脳神経外科診療を担当しています。認知症やMCIについて、ご本人とご家族から症状や生活上の変化をうかがったうえで、必要に応じて認知機能評価や神経学的診察、MRI・CTなどを組み合わせて評価し、専門的な検査や治療が必要な場合は適切な医療機関へつなげます。
担当する松本医師は、日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医、日本脳神経外科認知症学会認定医、日本てんかん学会専門医・指導医などの資格を有しています。
船堀駅から徒歩3分。受診とご予約について
所在地は東京都江戸川区船堀で、都営新宿線の船堀駅から徒歩3分です。江戸川区や船堀周辺で認知症や物忘れの相談先をお探しの方も、通いやすい場所にあります。
診療日や受付時間、休診情報、ご予約の方法は変更されることがあります。受診前に「アンカークリニック江戸川の脳神経外科」のページで最新の情報をご確認ください。
認知症に関するよくある質問
認知症は治りますか
原因によります。慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能の低下、ビタミンB12の欠乏、薬の影響などが背景にある場合は、治療によって改善が期待できます。
一方、アルツハイマー型など神経変性によるものは、現在のところ失われた機能を元に戻す治療はありません。症状の改善・維持を図る対症療法の薬と、病気の進行を抑えることを目指す抗アミロイドβ抗体薬があり、生活やケアの工夫によって日常の過ごしやすさが変わることもあります。
認知症は何科を受診すればよいですか
脳神経外科、脳神経内科、物忘れ外来、精神科や老年精神科が主な相談先になります。かかりつけの内科から紹介してもらう流れもあります。
物忘れに加えて、しびれ、頭痛、ふらつき、歩きにくさを伴う場合は脳神経外科や脳神経内科が、幻覚や妄想、強い興奮、著しい気分の落ち込みが前面に出ている場合は精神科や老年精神科が相談しやすい選択肢です。迷う場合も、まず身近な医療機関で構いません。
レカネマブやドナネマブは、どこの医療機関でも受けられますか
受けられません。対象はアルツハイマー病による軽度認知障害と軽度の認知症に限られ、投与の前にアミロイドPETまたは脳脊髄液検査で脳にアミロイドβの蓄積を確認する必要があります。
さらに厚生労働省の最適使用推進ガイドラインで、投与を行う医療機関の体制についても要件が定められています。まずは診察と検査で対象に当たるかどうかを確認し、必要に応じて対応できる医療機関へつなぐ流れになります。
親が認知症だと、自分も必ずなりますか
必ずなるわけではありません。認知症の多くは、加齢や生活習慣、血管の状態など複数の要因が関わって起こります。
ごく一部に遺伝の関与が強いタイプも知られていますが、これは全体から見れば限られた割合です。家族歴がある場合は、血圧や血糖、脂質の管理といった、リスクに関わる要因の手当てを早めに始めておくことのほうが現実的な対応になります。
本人に診断名を伝えたほうがよいですか
一律の正解はありませんが、伝えることで本人が今後の生活や希望について考え、準備を進められる面があります。認知症基本法で示された考え方も、本人が自分の意思をもって暮らし続けることを前提にしています。
ただし、伝え方や時期は本人の状態によって変わります。医師と相談しながら、どこまで、どのように伝えるかを決めていく方法があります。
まとめ
認知症は一つの病気の名前ではなく、さまざまな病気によって認知機能が低下し、生活に支障が生じている状態を指す言葉です。アルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型では、現れやすい症状も進み方も治療の考え方も異なり、複数の要因が重なっていることもあります。
診断は、問診、認知機能評価、神経学的診察、血液検査、画像検査を組み合わせて行われます。画像検査は認知症かどうかを判定するためというより、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症のように治療で改善が期待できる原因を見落とさないために行う意味合いが大きい検査です。
治療では、認知機能や症状の改善・維持を目的とする従来の対症療法に加え、2023年以降は、アルツハイマー病の病態に働きかけて進行抑制を目指す抗アミロイドβ抗体薬という選択肢も加わりました。ただし対象と実施できる医療機関は限られます。薬以外にも、生活の組み立て方やケアの調整でできることは残されています。
数日から数週間で急に様子が変わった場合は、認知症の進行ではなく、せん妄や慢性硬膜下血腫など別の原因が隠れていることがあります。早めにご相談ください。
江戸川区や船堀周辺で認知症や物忘れが気になる方は、アンカークリニック江戸川の脳神経外科、物忘れ外来にご相談いただけます。「脳神経外科の診療について」もあわせてご覧ください。
