お子さんの肘内障について江戸川区・船堀の整形外科医が解説します
お子さんが突然、
●肩を動かさない
●腕を動かさない
●肘を痛がっている
など、このような経験はありませんか?
もしかすると、それは「肘内障 ちゅうないしょう」かも知れません。
この記事では、肘内障とは何なのか、その症状や原因、治療(整復)、受診のタイミングについてアンカークリニック船堀 整形外科の藤井 達也が解説します。
肘内障とは?
子供の肘や腕の怪我は2歳くらいの小児から多くなってきます。
例えば、上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)や前腕骨骨折(ぜんわんこつこっせつ)、鎖骨骨折です。これらの骨折と並んで、よく起こるのが、肘内障です。
肘内障とは肘で一部の骨が亜脱臼を引き起こす病気です。
生後6ヶ月程度と2歳~6歳くらいまでの年齢に起こりやすいです。
男児より女児に、右手より左手に多い特徴があります。
亜脱臼と書きましたが、最近は超音波検査が発達してきており、亜脱臼の本当の姿は、肘の骨と骨の間に靭帯(輪状靭帯 りんじょうじんたい)と筋肉(回外筋 かいがいきん)がはさまることがわかってきました。
このことも踏まえながら症状をみてみましょう。
肘内障の症状とは?
肘内障の典型的な症状は
●肩がはずれた
●腕をうごかさない
です。
どういうことかというと、何らかの原因で肘の骨と骨の間に靭帯と筋肉がはさまってしまうため、少しでも肘を動かそうとすると痛みが走ります。
すると肘を動かさないように腕をだらんとさせ、親から見るとあたかも「肩がはずれた」ようにみえるというわけです。
江戸川区・船堀で外来をしていると、
●肘を痛がっている
●腕を痛がっている
と訴える親御さんが多いです。こちらも腕を動かそうとしないのが重要なポイントです。
ただ、骨折であってもほぼ同じ症状をきたすため、これだけでは骨折か肘内障かはわかりません。
肘内障の原因とは?
肘の骨と骨の間に靭帯と筋肉がはさまってしまう原因は
●腕を引っ張られた(最多)
●転んで手をつく
●寝返り(1歳未満に多い)
の3つが多いです。
腕を引っ張られたというエピソードは、1歳以上では約半分を占め、最多の原因です。
しかしながら、文献的には約1/4のお子さんで原因がはっきりしないとされています。
実際に話を聞くと、「目を離した時に子供が突然泣いていたが、もしかしたら転んだのかもしれない。」
「いきなり泣いたので見に行くと、ソファの横で転んでいた」などという場合が多いです。
それではこれらの原因をひとつひとつみていきましょう。
肘内障の原因①:腕を引っ張られた(最多)
原因の1つ目は「腕を引っ張られた」です。
1歳未満では約1/4が、1歳以上では約1/2が肘を引っ張ったことで肘内障が引き起こされています。
腕とは前腕のことを指します。手を引っ張ることでも同じことが起きます。
整形外科外来で親御さんからお話を伺っていると、転びそうになり手を引っ張って助けようとしたら痛がった、起こそうとして手を引っ張ったら腕を動かさなくなった、というような話が多いです。
腕を引っ張ると、前腕の骨(橈骨 とうこつ)が引っ張られ、肘の骨と骨の隙間が大きくなります。
その後、前腕の骨が戻ろうとする時に靭帯や筋肉が骨と骨の間にはさまってしまいます。
肘内障の原因②:転んで手をついた
原因の2つ目は「転んで手をついた」です。
手をついたと表現しましたが、お子さんが小さいとどう転んだか言えない場合も多いです。
こちらは原因①の腕をひっぱられたという時のように明確なメカニズムはわかっていません。
ただ、何らかのことが起こり、肘の骨と骨の間に靭帯や筋肉がはさまってしまうようです。
原因③:寝返りをうった
原因の3つ目は「寝返り」です。
これは1歳未満、特に6ヶ月前後の乳児に多い原因です。
6ヶ月頃はちょうど寝返りができるようになる頃で、自力で起き上がろうとし、そのまま転がってしまったりします。
寝返りする時に肘を伸ばしたまま腕が体の下にはいりこんでしまうことがあり、これが腕をひっぱるのと同じ状況を引き起こします。
肘内障の予防
肘内障にならない、肘内障させないために腕を引っ張らないようにしましょう。6歳未満で多いのですが、一度肘内障を起こすと5-10%で再発します。
場合によっては3回以上起こる子もいます。
骨や靭帯、筋肉が成長し6歳以上では起きにくいとされていますが、筆者の上司は「昔中学生の肘内障をみた」と言っていました。
つい子供の手を引っ張って危険を回避してしまうのもわかります。
ただ、肘内障を起こさないようにするには手や前腕を引っ張らないのが最善策です。
肘内障の診断
整形外科外来において、肘内障の診断で最も重要なのは、同じ年代の小児で起こりやすい上腕骨顆上骨折を調べることです。
肘を引っ張っていないのに痛がっているなど、典型的でない病歴や転倒、転落などの場合には骨折も視野に入れて診療します。
検査は超音波検査を行いますが、骨折を疑う場合はレントゲン検査も行うことがあります。
お子さんの骨はまだ成長途上で、成長している部分がレントゲンで骨折と間違われやすいため、痛くない方の肘も撮影・比較し、的確な診断を行っていきます。
肘内障の治療方法
肘内障の治療は「整復」です。
整復とは、骨折やはずれた関節などを、もとの正常な状態になおすことです。
具体的には、肘の骨と骨の間にはさまった靭帯と筋肉をひっぱりだします。
医学的には様々な方法があります。「深回内 しんかいない」「手関節回外 しゅかんせつかいがい+橈骨頭圧迫 とうこっとうあっぱく」などです。
挟まり込みが解除される時にむにゅっと筋肉や靭帯が関節から飛び出します。この時医師の手にはコクッという「クリック」した時のにような手の感触があり 整復できたなと感じます。
整復後は痛みがなくなるためすぐ肘を使い始め、痛かった手でバイバイしてくれることが多いです。
※注意※
ここでご紹介した整復操作は「骨折がない」ということを前提にしています。
周囲に受診できる医療機関がない場合などを除いて親御さんによる整復操作はおすすめできません。
アンカークリニック船堀の治療方針
アンカークリニック船堀では超音波検査に力を入れています。
ただ、お子さんは肘を触られること自体が怖いので、慎重に可能な範囲で検査を行います。
お話を伺ったり、レントゲン検査を行ったりします。
その上で肘内障の診断がついたら、整復を行います。整復後、すぐに肘を動かし始めればよいのですが、なかなかそうもいかない場面もあります。
長時間はさまっていた子では、はさまっていた筋肉で出血を起こしていたりするので、整復後も痛みが残っているからです。
そのような場合も超音波検査を行い、靭帯や筋肉の挟まり込みが解除されていることを確認できていれば、少し外来で経過をみます。
落ち着いたところで痛がっていた手を使っていれば整復ができていたということになります。
最後に痛かった方の手でバイバイできれば帰宅です。
江戸川区・船堀での整形外科はアンカークリニックへ!
最後まで読んでいただきありがとうございます。アンカークリニック船堀 整形外科の藤井 達也です。
ここでは小児肘内障について、症状や原因、メカニズム、そして診断と治療について解説してきました。
もしお子さんが突然腕を動かさない、肩がはずれてるかもと思ったら、肘内障や骨折の可能性があります。
いずれの場合もそのままにしておけない病気や怪我です。
アンカークリニック船堀は平日土曜、夜22時最終受付、22時30分まで診療していますので、夜間であってもお困りの際はご相談ください。