はじめに
このnote記事は「フローチャート整形外科診断」を書き散らかしたふじたつが、外来で経験した典型的な症例を用いて、恐れ多くも家庭医、総合診療医、救急医のためにトレーニング形式でそのノウハウをシェアする場です。読者の方々と一緒に研鑽を積めたら嬉しいです。
アンカークリニック船堀では短期〜長期の整形外科外来研修を受け入れしています。興味ある医師の方はご一報ください!
◆ご覧いただきたい方
・整形外科診療に携わるプライマリケア医
・救急外来でWalk in症例を診る初期研修医
・卒後3年目の駆け出し整形外科医
※3次救急というよりは地域の1次2次救急外来やER、クリニックなどを想定しています
※上記以外の専門医の方も「Advanced」の項目は是非見てみてください
◆解決する課題感
・「肩痛や腰痛の患者さんを診る時にどのように対応してよいかわからない」
・「膝痛を訴える患者さんで見逃しちゃいけない疾患はなんだろう」
などなど
このような課題を解決するために、冒頭紹介した書籍「フローチャート整形外科診断」に加え、本記事で追加の症例解説をしていきます!
なので、熟練の整形外科医にとっては当たり前の内容かと思いますが、
ただただ、わかりやすさを追求し、たとえ初めて整形外科疾患を診る医師でも「できる」内容として記載するように努めています!
ぜひこれから一緒に学べたら嬉しいです!
より短時間で確認したい方はこちら!
以下会話形式での解説です!
◆登場人物
[症例23] 45歳男性 右頚部痛
1週間前から右頚部に痛みを自覚した。なかなか改善しないため、日中整形外科外来を受診した。
R:頚部痛って何からやってけばいいんですか?
O:まぁ落ち着いて、フローにそってやっていこう。
R:はい。まずは肩痛かどうかですよね。
O:そうだね。首が痛いって言っている患者さんに聞いてみると意外と肩の方を痛がっていることもあるんだよね。なので最初で間違えないように確認しようって話。
R:そうなんですね。
O:それでどう?
R:後頚部痛ってことでした。
O:ok。外傷はないよね?
R:はい。特になしです。
O:次は感染や腫瘍の確認だね。
R:はい。発熱はなしです。
O:うん。夜間痛や癌の既往、体重減少はどう?
R:そういったものも特になかったです。
O:夜間はどうやってきいた?
R:はい先生、あれですよね!「痛みで目が覚めるか?」ですよね。
O:そうそう。大丈夫そうだね。
R:はい!小児ではないので、次に進みます。
O:ok
R:次は上肢症状ですね。
O:どう?
R:特に手のしびれはないですね。
O:ok。細かく言えばこの後鑑別に出てくる筋筋膜性疼痛症候群や硬膜外血腫、転移性脊椎腫瘍では上肢症状を起こしうるんだけどね。ここでは一旦なしとしてすすめてみよう。
R:はい。となると鑑別はこんな感じでしょうか。
O:病歴はどう?
R:普段はデスクワークで、慢性的に肩こり首こり腰痛があるとのことでした。今回は1週間前からだんだんと痛みが強くなってきたようです。特に既往はなかったです。
O:なるほど。首は回るって?
R:特に何も言っていませんでした。
O:ok、あとで身体所見確認しよう。今のところRedflagsの可能性は低そうだね。
R:そうですね。偽痛風やPMRも年齢的には可能性低いでしょうか。
O:そうだね。PMRは文献的には70歳からがボリュームゾーンのようなのだけど50代の症例もあるらしい。
R:そうなんですね。
O:次は身体所見だけど、どう?
R:左への回旋制限がありました。右後頚部がひっかかるような感じがするって言ってました。
O:なるほど。斜角筋はかたかった?
R:えっと診てきます。なんで斜角筋なんですか?
O:回旋制限があるってことは後頚部の筋膜の癒着が起きていて、痛みで僧帽筋を無意識に筋緊張させて回旋しないようにしている可能性が高いんだ。そうなると胸郭が開きづらくなって呼吸補助で斜角筋を使い始める。それで最後に斜角筋が発達して硬くなってくるという流れなのよ。
R:なるほど!
O:さらに進むと斜角筋から腕神経が出てきているので圧迫されると上肢のだるさや痛みを訴えたりする人もいるんだ。
R:そうなんですね!今触ってきたら斜角筋ガチガチでした!
O:姿勢も悪いっしょ?
R:はい、猫背でSVAが大きい感じでした。
O:お、おう(SVAなんぞ使いおって..)。耳の後ろは圧痛あった?
R:なかったです。
O:ok、そしたら後頭神経痛の可能性も下がるかな。
R:はい。次は検査ですね。頚椎のレントゲンでしょうか。
O:そうだね。腰痛もあるって言ってたよね。今まで評価されていない腰痛だったら腰椎も撮影しておいて。MPSの人は骨盤後傾している可能性高いので。
R:わかりました!
R:頚椎はいわゆるストレートネックですね。
O:そうだね。これだけだと何も言えなくて腰椎からのアライメントが大事なんだ。腰椎をみてみると骨盤後傾あるよね。
R:なるほど。骨盤後傾があるから腰椎が垂直に立ち上がって、胸椎で強い後彎を作ってストレートネックで帳尻を合わせている、こんな感じの解釈でしょうか。
O:そうそう。私見だけどストレートネックは治療すべきプライマリの病態じゃなくて、骨盤後傾の結果だって説明していることが多いかな。
R:それわかりやすいです。治療はどうなるんでしょうか。NSAIDs、エペリゾンとかトリガーポイントでしょうか。
O:文献的にはそれで正解だよ。ただそれだけだと痛みがとれてこないことが多いかな。僕は患者にセルフストレッチをしてもらってるよ。
R:どんなやつですか?
O:うん、臀筋を伸ばすストレッチでこんなん。
R:なるほど!けっこうきついですね。背筋伸ばせないです。。。
O:かたっ!そういう時は頭を後ろの壁につけて骨盤を反る感じかな。
R:むずいっす。
▶︎Advanced もし自分が外来で診るなら〜筋筋膜性疼痛症候群〜
保存治療が基本で、内服薬、外用薬に加え、理学療法、物理療法、鍼灸治療などが報告されている。関連痛は僧帽筋、広背筋に沿ったものが特徴で、場合により開口障害も生じうる。決定的治療はなく、私見だが投薬では治る見込みは小さく、骨盤後傾を矯正し、正しい座位、立位姿勢を獲得し筋緊張を除去することが根本的治療となると思われる。
アンカークリニック船堀では短期〜長期の整形外科外来研修を受け入れしています。興味ある医師の方はご一報ください!
問い合わせ先
アンカークリニック船堀
〒134-0091 東京都江戸川区船堀4-3-6 メゾンドサントル船堀101
当院の方針
アンカークリニック船堀では、皆様のお話から胸痛の原因がなんであるか、問診で絞り込みます。また必要時には血液検査、心電図検査、レントゲン、心臓超音波検査を行います。
これらによって胸が痛い原因を突き止め、適切な治療を進めてまいります。場合によっては専門施設へ紹介いたします。
胸が痛い症状がある方は気軽にご相談ください。