トレートネックについて船堀の整形外科医が解説します
「ストレートネックと言われたことがある」
「首が痛くなりやすい」
こんな経験はありませんか?
この記事では、ストレートネックでお悩みの方に向けて、ストレートネックの症状や原因、予防やセルフケアなどについてアンカークリニック船堀 整形外科の藤井 達也が解説します。
※側弯症や腰椎分離症、滑り症などの病気が既に見つかっている方は今回の記事は参考程度となります。あくまでそういった病気を指摘されたことがない方向けです。
ストレートネックとは?
ストレートネックとは、首の骨(頚椎 けいつい)の並びがまっすぐになっている状態のことをさします。
医学的な分類では、首の骨の並びは4種類あります。
首の骨の並び
●前彎(ぜんわん):並びが前に凸
●ストレート:並びがまっすぐ
●シグモイド:並びが前に凸だったり後ろに凸だったり
●後彎(こうわん):並びが後ろに凸
文献によっては特に症状のないアジア人で45%程度の人にストレートネックを認めたとする報告もあります。
私見ですが、割と多いなぁという印象です。
ではストレートネックとはどういう症状を出すのでしょうか。みていきましょう。
ストレートネックの症状とは?
ストレートネックの症状として一般的なものは「頚部痛、肩こり、首こり」が挙げられています。 ただ、医学的にストレートネックそのものでこれらの症状を来すことはなく、腰や骨盤の骨、背中や首の筋肉の影響を強くうけます。例えば猫背の人は首の骨の付け根が既に前に傾いていて、ストレートネックの頻度が上がります。
そのような姿勢の人がPC作業をすると首の後ろの頭を支える筋肉に負担がかかりやすく、首の痛みや首こり、肩こりにつながります。
このようにストレートネックはあくまで猫背の結果で、症状と関連はありますが、原因とは言いづらいのです。
ストレートネックの原因
それでは一体何がストレートネックの原因なのでしょうか。
それは、
●腰や股関節、背中の筋肉の不具合
です。
この不具合を医学(特に整形外科)的には骨盤、腰椎(ようつい)アライメント異常といいます。
アライメントと言われるとなんだか難しく感じてしまうかもしれませんが、ようは「何らかの原因で姿勢が悪いよね」ということです。
姿勢が悪いから結果的に首や肩に負担がかかってストレートネックになったり、首肩の症状が出るという流れです。
骨盤、腰椎(ようつい)アライメント異常を引き起こす要因は大きく3つあります。
●腹筋背筋筋肉のアンバランス
●インナーマッスル(腸腰筋)の低下
●臀筋の硬直
この3つです。ひとつずつみていきましょう。
ストレートネック原因1:腹筋背筋筋肉のアンバランス
1つ目は腹筋背筋のアンバランスです。
人間の身体は意識しないと前側の筋肉をメインで使うため、相対的に身体の前側の筋肉が硬く、縮んできます。
すると、より猫背になり背中から首の後ろの筋肉が硬直し痛みを出します。
加えて腹筋が低下してくるとお腹が出て、骨盤と腰の繋ぎ目は前に傾いてきます。そうすると前に倒れ込むような姿勢になるため、バランスをとるため腰を反った状態になります。
この状態の人ではストレートネックの頻度もあがります。
ストレートネック原因2:インナーマッスル(腸腰筋)の低下
2つ目はインナーマッスル(腸腰筋)の低下です。
インナーマッスルとは身体の深いところにある筋肉のことです。
今回はその中でも腰や骨盤にとって重要なインナーマッスルである腸腰筋に注目します。
腸腰筋は、腰と大腿骨についていて、歩く際、太ももを持ち上げる(股関節を曲げる)のに使います。
ただ歩く距離が減ったりして、この筋肉が減り縮んで硬くなると、骨盤と腰の繋ぎ目が後ろに傾き、腰のもともとあるS字カーブの角度が減ってしまいます。
そうなると背骨全体が棒のようになり(首の付け根も本来より後ろに傾き)、ストレートネックの頻度が上がります。
腰ストレートネック原因3:臀筋の硬直
3つ目は臀筋の硬直です。
臀筋はおしりとふとももについていて、歩く時に使う筋肉です。
足が地面についた時にこの臀筋を使って身体を支えます。陸上の選手などのお尻が大きいのはこの臀筋が発達しているためです。
臀筋が硬くなると、腰と骨盤の繋ぎ目が後ろに傾き、もともとある腰の反りが少なくなってしまいます。
結果、背骨全体が棒のようになり、首の付け根も本来より後ろに傾くため、ストレートネックの頻度があがります。
ストレートネックの原因まとめ
ここまで姿勢の悪さを引き起こす原因についてみてきました。
もちろんこれだけではなく、仕事での作業姿勢が悪かったり、スマホ操作など何かに集中しすぎて肩に力が入りすぎていたりすることも影響します。
ここからは予防やセルフケアについて解説していきます。
ストレートネックの予防
ストレートネックにならないようにするには、腰を含めた背骨と骨盤の骨の並びを崩さないようにしていくことが大切です。
具体的には、
●腹筋背筋のバランスを整える
●腸腰筋などのインナーマッスルを鍛える
●臀筋を柔らかくする
です。
長時間のPC作業や座ってのスマホ操作などの際には、は定期的に胸を開くようなストレッチを入れたり、もし運動できる環境を作れるなら、「歩行やジョギング」に加え「腹筋背筋」を鍛えるようにすると予防につながります。
具体的な予防方法はこのあと解説します。
仕事での作業姿勢の見直しやストレッチはこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:首が凝った時にすべき行動と整形外科受診のタイミング
ストレートネックのセルフケア
もしストレートネックと診断されたら体幹ストレッチと臀筋ストレッチ、そして腸腰筋のトレーニングをしましょう。
●体幹ストレッチ
●臀筋ストレッチ
●腸腰筋トレーニング
それぞれどんなことをしたらよいのか解説していきます。
セルフケア1:体幹ストレッチ
1つ目は体幹ストレッチです。
体幹ストレッチをすることで胸を開き、腰にもともとあるS字カーブを取り戻すイメージです。
具体的には股関節90度、膝90度の状態で足がしっかりつくように座ります(足台が必要になることが多いです)。
姿勢よく座った状態で両方の手のひらを天井に向けます。次に肘を身体の後ろに向かってひきます。
次におへその下とお尻の穴の間くらいに力を込め、肩の力を抜きます。
最後にこの状態でゆっくりと深呼吸をします。呼吸は10秒以上かけて吸い、一度止め、10秒以上かけてはくというふうに行います。
この時おへその下、お尻の穴の間に意識を集中させます。肩の力が入りすぎていることが多いので気をつけてやってみてください。1分程度深呼吸します。
胸が広がると猫背になることはありません。
耳、肩、腰が垂直になっていたら正しい姿勢です。ぜひ目安にしてみてください。
セルフケア2:臀筋ストレッチ
2つ目は臀筋ストレッチです。
これも股関節90度と膝90度の状態で足がしっかりつくように座ります。
次に右足首の外くるぶしを反対の左膝の上に置き、外くるぶしで膝を軽く押します(5秒くらい)。
その状態で背筋を伸ばし、伸ばしたままに前に倒します。
右の臀部が伸ばされて、軽い痛みを感じたらストレッチできています(10秒くらい)。
次に反対側の左足首を右膝に乗せて同じストレッチを行います。
両方終わって座り直してみると背筋を伸ばした時に腰が伸びている感じが実感できると思います。
セルフケア3:腸腰筋トレーニング
3つ目は腸腰筋トレーニングです。
まず仰向けに寝ます。
背筋を伸ばし、背中が丸まっていないことを確認したら股関節90度と膝90度曲げます。
この時にもう一度背中が丸まっていないことを確認します(背筋が足りないと丸まってしまうことが多いです)。
次にまた足を伸ばします。この時に踵は床につけないようぎりぎりを保ちます。
そしてまた股関節と膝を90度曲げます。
これらの動作の間、絶えず背中が丸まっていないことを意識してみてください。
ゆっくりした動作で1サイクル10回程度行います。
ストレートネックの治療法
ストレートネック自体に治療を行うというよりは、ストレートネックになってしまった原因をつきとめ、治療の必要な病気がみつかればその治療を行うというのが基本方針です。
今回の記事では対象にしておりませんが、ストレートネックをきたす背骨の病気もあります。
例えば側弯症です。こういった治療介入が必要な病気に対して、症状を和らげるために内服薬を使用したり、装具治療、程度によっては手術治療なども考慮します。
アンカークリニック船堀での治療方針
アンカークリニック船堀では、そのままにしてはいけない治療の必要な病気が隠れていないか、お話を伺い、お身体のチェックをした上で、セルフケア指導に力を入れています。
カイロプラクティックや整体に行かれる方もいらっしゃいますが、根本的な原因は仕事(PC作業など)日常生活(スマホ操作など)に潜んでいることが多いです。
ぜひ相談しながら、一緒に解決していきましょう。
船堀での整形外科はアンカークリニックへ!
ここまで読んでくださりありがとうございました。アンカークリニック船堀 整形外科の藤井 達也です。
ストレートネックときくと病気なのでは、と思われる方も多いと思いますが、ストレートネックは結果だと思います。
セルフケアをしてみても首肩の痛みがよくならない、ストレートネックと言われた不安だという方は是非一度ご相談にいらっしゃってみてください。