肩の痛みについて船堀の整形外科医が解説します
「肩が痛い」
と感じたことはありますか?ひとことに肩が痛いといっても人によって感じている痛みは違います。
例えば、首から肩にかけての痛みだったり、肩を動かす時の肩の痛みだったりなどです。
船堀 で整形外科医をしております、藤井 達也です。
この記事では肩の痛みで考えられる3つの原因を紹介しながら、それぞれの治療法や予防、セルフケアについても解説します。
肩の痛みってどういうこと?
肩が痛いという訴えは首が痛い、腰が痛いに続き、整形外科外来を受診する理由第3位です。
ここ船堀でも肩が痛くて来院される方は多いと感じています。
年代によって少し特徴があり、40歳前後の女性に多いのが、首の神経痛(医学的には頚椎症性神経根症 けいついしょうせいしんけいこんしょう)、40歳を超えて増えてくるのが、四十肩です。
年齢に関係なく起こるのが、肩こり(医学的には筋筋膜性疼痛症候群 きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)です。
このように肩の痛みはひとつの病気で起こるわけではありません。
それでは「肩が痛い」をもう一段階掘り下げてみてみましょう。
肩の痛みに関連する症状とは?
肩の痛みをもう少し解像度を上げて見てみると、
①肩から首にかけての痛み
②肩を動かすと肩が痛い
肩甲骨のところと腕の痛み
この3つに分けられます。
①の肩から首にかけての痛みは、いわゆる肩こりや首こりという症状です。
首から肩の筋肉にしこりのように硬い部分がある場合や、首の後ろから頭の後ろまで痛みがある場合もあります。
②の肩を動かすと肩が痛いというのは、少し遠くのものをとろうとした時に肩の痛みを感じたり、肩を後ろにまわそうとすると痛かったりするということです。
悪化すると肩が固まったように動かなくなります(いわゆる四十肩)。
③の肩甲骨と腕の痛みというのは、まず最初に肩甲骨の近くが痛くなり、数日遅れて腕の痛みが出るという症状です。
程度がひどいと手首や指先まで痛みやしびれを感じます。指は特定の指であることが多く、親指側、中指周辺、小指側の大きく3つに分かれます。
肩の痛みの原因
肩の痛みの原因も症状に合わせて考えてみるとわかりやすいです。
肩の痛みの原因
①肩から首にかけての痛み→「首肩周りの筋肉の問題」
②肩を動かすと痛い→「肩関節そのものの問題」
肩甲骨のところと腕の痛み→「首の神経の問題」
具体的な病名でいうと、①の首肩周りの筋肉の問題は、筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)、②の肩関節そのものの問題は、腱板断裂(けんばんだんれつ)や腱板損傷(けんばんそんしょう)などの肩を動かす筋肉の病気やいわゆる四十肩、五十肩、③の首の神経の問題は、頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)です。
それぞれの原因をみていきましょう。
肩の痛みの原因1:筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)
1つ目は筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)です。
これは頭を首の後ろからひっぱって支えている僧帽筋(そうぼうきん)という筋肉とその周囲の筋肉の不具合により起こります。
大人だと頭の重さは5kgにも及ぶので、姿勢が悪く前傾姿勢をとっていると僧帽筋が疲労し、周囲の筋肉と癒着したり炎症を起こしたりして痛みを出します。
※こちらの記事も参考にしてください
▼関連記事:首が凝った時にすべき行動と整形外科受診のタイミング
肩の痛みの原因2:肩関節の病気(五十肩や腱板断裂など)
2つ目は肩関節の病気(四十肩や腱板断裂 けんばんだんれつ など)です。
40歳以上では、肩を動かす筋肉の付け根(腱板 けんばん といいます)がすり減って損傷することがあります。損傷すると肩を動かす時痛みを感じるため、動かさなくなってしまいます。
そうすると肩を動かす筋肉と周りの筋肉が癒着して、肩が固まり、四十肩、五十肩につながります。
※こちらの記事も参考にしてください
▼関連記事:五十肩が辛い方必見!痛みの原因と治療について
原因3:頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)
3つ目は頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)です。
これは40歳前後でデスクワークをしている女性に多い病気です(もちろん男性でも起こります)。
原因の1つ目と同じく、前傾姿勢でのデスクワークや前屈みでの作業を続けることで発症します。
病名としては神経が首の根元で押されているという名前ですが、神経を圧迫する最多の原因は頚椎のヘルニアです。
肩痛の予防
肩痛にならないようにするためには次の2つが重要です。
●作業姿勢を整える(前傾姿勢や猫背にならないようにする)
●肩をよく動かす、固まらないようにする
作業姿勢を整える
正しい作業姿勢は原因の①と③である首の後ろの筋肉の不具合やヘルニアの予防に役立ちます。
▶︎椅子に座る場合
膝と股関節を90度に曲げ、お尻の穴→両肩→耳の穴が一直線 になる姿勢
▶︎立っている場合
踵→膝→お尻の穴→両肩→耳の穴が一直線 になる姿勢
いずれの場合も前傾姿勢をとる時に意識してほしいことは、背中を丸めてかがまないようにするということです。
バーベルの選手が腰を反ったままバーを持ち上げるように背筋を使い背中を丸めないように屈んでみてください。
背筋が必要なので、慣れないと疲れると思いますが、腰や首には負担は少ないです。
肩をよく動かす、固まらないようにする
次に肩をよく動かすというのは、原因の②肩関節の病気を予防します。
すごく簡単に言えば、肩をぐるぐる回せればそれでokです。
もっと詳しくという場合は、次のセルフケアの章で解説しています。
肩痛のセルフケア
肩痛になってしまったら、
(a)作業姿勢の見直しと+@
(b)肩ストレッチ
上記をするようにしましょう。
それぞれ解説していきます。
作業姿勢の見直しと+@
作業姿勢を見直すとともに、1時間の作業の間に1回程度を目安に姿勢を整えるストレッチをします。 手順は以下の通りです。
ストレッチ方法
1.まず背筋を伸ばします。
2.次に肘を曲げ手のひらを天井に向けます。
3.その状態で肘を体の後ろまでひきます。※この時おへその下とお尻の穴の中間くらいの下っ腹に力を込め、肩の力をぬきます。
4.そして深呼吸をします。
肩のストレッチ
肩のストレッチは次の2つが重要です。
①挙上(きょじょう)
②外旋(がいせん)
①の挙上(きょじょう)は肩を前からどのくらい上に上げられるかというものです。
両肩をあげてみてください。ぴったり耳までつけばこのストレッチは不要です。
もしあがらなければ、両手を壁につき、肘を伸ばし、その間に頭を入れてみてください。肩にストレッチがかかる感じがあると思います。
肩の可動域が狭くなっていると、肘が曲がってしまったり、痛みを感じたりします。
②の外旋(がいせん)は肩を外側にどのくらい回せるかというものです。
肘を身体につけたまま、手を外側に広げてみてください。手が身体の真横までいけば、このストレッチは不要です。
真横までいく途中で痛くなってしまったら、
(右肩の場合)肘を身体につけたまま、肘を90度曲げ、親指が天井をむくように右の手のひらを横にして壁につけます。壁に右手をつけたまま右胸を開くように身体をひだりにひねってみてください。肩が広がる感じがあると思います。
肩痛の治療法
肩痛の治療はそれぞれの病気に応じて、最適なものを選択します。
①筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)の場合
症状は首から肩にかけての痛み、肩こりです。
こちらはセルフケア(作業姿勢の見直しやストレッチ)が中心で、鎮痛薬でサポートします。
人によっては筋膜どうしの癒着が強くなり、首のまわる角度がせまくなるなど重症化します。
その時は超音波検査で筋膜の癒着箇所を見つけて、注射で癒着を剥がし、サポートします。
②肩関節疾患(四十肩や腱板損傷)の場合
症状は肩を動かすとでる痛みです。
こちらもセルフケア(ストレッチ)が中心で、鎮痛薬でサポートします。
特に四十肩では肩を動かす筋肉とその周りにある三角筋の間で癒着を起こしていることがあり、超音波検査で癒着箇所を見つけて、注射で癒着を剥がすこともあります。
腱板損傷の程度がひどい場合には手術になることもあります。
③頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)の場合
症状は肩甲骨と腕の痛み、しびれです。
こちらは、3ヶ月以内に自然に治る場合が多いので痛みやしびれに対して内服や外用薬を用いて治療します。
痛みが長引く場合などは、斜角筋ブロックという神経ブロック注射を合わせて行う場合もあります。
稀ですが、神経の圧迫がひどいと、手の使いづらさ(字が描きづらい、ボタンがかけづらい)が出ることがあり、その場合は精密検査(MRIなど)の上、手術となることもあります。
アンカークリニック船堀の治療方針
当院では診断に力を入れています。
まずはお話を伺い、どのような経過で来院されたのかきいていきます。
その上必要があればレントゲンや超音波検査を行い診断します。
また、患者さんのお仕事や生活スタイルに合わせて、作業姿勢の見直しやストレッチを一緒に考えていきます。
ただ内服や外用薬だけでなく、必要があれば超音波検査をガイドにした注射の治療も行っていますので、ご希望の際はご相談ください。
船堀で肩の痛みを感じたら、アンカークリニック船堀へ
アンカークリニック船堀 整形外科の藤井 達也です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
肩が痛いというとついつい安易に四十肩だよね、と決めつけたくなりますが今回の記事でご紹介した通り四十肩以外にも肩の痛みを出す病気はあります。
「自分の症状や経過がどのようなものなのか知りたい」、「予防やセルフケがでよくならないので相談したい」、などお気軽にご連絡ください。